本気というもの

 さて、ちょい前に触れた「魔法少女隊アルス」のOVA版が、忘れる前に放送されたので早速見てみた。
 うーむ、今一歩、かな(笑)。やっぱ脚本作りがまだ粗いという事なのだろうか、これは。
 もっとも一話完結式なので、初めからケツまで流れに引き摺られた構成の苦しさばかり目立つ本編よりはよっぽど良かったし、どれも小話としては十分楽しめたと思う。むしろこれで40話やって欲しかった、とは。
 ただまぁどうしても、何とか時間内に話をまとめましたという危なっかしさが見え隠れするのは本編譲り。別に枝葉の描写が不味いだけなら余裕で目を潰れるんだけど、軸の部分で「ん?」となってしまうと、それが物足りなさに繋がるのかなぁという。何となく脇が甘い。
 ま、概ね子供向けの番組に何マジになってんの、と思われそうですが。脚本作りの質の善し悪しにその点は関係ないのではないかな、とは一応。

 いやぁ、やっぱこの変てこファンタジー世界やキャラクタは結構好きだったもんで、勿体ないというか歯痒いというか(笑)。
 今回はアナザーストーリーという位置付けだからか、本編に組み込まれると危険そうなエピソードやキャラクタが平気で盛り込まれていてそこは面白かったけどね。所詮、設定なんてものは世界観の定義以上の強制力はあってはいけないのだと思うところ。古の魔女の封印は解いてしまうし、メトロフレックス級のどう見ても捕獲できそうにない大型妖精は出てくるし(笑)(別枠ってことなんだろうけど)。いやむしろ、彗星よろしく数百年単位で世界を巡回する巨大生物というファンタジックなキーワードこそ心ときめく部分なので、細かい事はどうでもいい。まぁ雲よりも高い巨人には見えなかった気もするけど、メトロフレックスも大きさ出鱈目だったしナー(ぉ)。
 この辺、前後関係とか、(作品中の)リアリティが薄れるという点で敬遠されがちな作り方なのかもしれないけど、むしろこういうのをガンガンやりながら幅を広げていくくらいの方が心地良くて好きですよ。設定の枠に閉じこもる方がよっぽど酷い。

 あとはキャラクタ。シーラはイサコよりは遥かに良い、とは言っておきましょう(ぉ)。
 本来ああいうクールな優等生タイプは嫌いな事が多いのだけど、厳しいだけで決して冷徹ではないので後腐れは無く、むしろ責任感が空回りしているだけという描写は、同じ「実は憎めない」というキャラ作りの中でも良い形だったと思う。
 一方、行動派のおちゃらけ主人公アルスは、某氏にもからかわれたように「魔法は人を幸せにするもの」というキャッチコピーが余りにもこそばゆすぎて辛いというのが本音だけど、要は純真って事なので、もうちょっと描き方を変えるだけで違ったと思うんだけどね。
 この我の強い二人に対して、年少で成長物語担当のエバは所々で頑張りつつも、ストーリーの締めに利用されて結局最後まで成長出来てませんでしたというオチになってしまったのが実に痛い。
 やっぱ何かこう、悪くない筈なのに大ポカやっちゃってる感? 惜しかったなぁと。

 どうせこういうのはたまにしかやらないのだから、もっと一球入魂して欲しいと思うんだよね。いや、たまにはじゃなくても、なんだけど。