玉転がしの感触

 さて、「コロリンパ2」(海外版)の話。
 もう国内版の発売も来月に迫って今更感ありありですが。一応自分なりのけじめの意味でケリを着けておこうと思いまする。
 一応NORMALを一通りクリアしてHARDをちょろっとやって見切りを付けるまで。HARDはステージ構成が変わるので決して全てを見ていないと言われればそうだけれど、そこまでやらにゃ面白くならないゲームもどうかと思うし、実際ゲームの本質が変わるとまでは思えないのでこれまで。

 今作をやってまず気に掛かるのが「ガムテープの上を転がしているかのような感触」
 加速があまりにも鈍くちょっとやそっと傾けた程度では誤差の範疇の動きにしかならない。あくまでボールを押し進めるにはグッとコントローラを傾ける(坂をきつくする)必要がある。そして平らに戻せば急激に加速を失いブレーキが掛かったかのように止まり始める。これは玉のパラメータの問題というものでもないようで、パラメータ可変の玉を持ち出して散々試してはみたものの、前作のクイック且つ繊細な操作性は望むべくもなかった。おそらくは前作のあの挙動が逆にフラフラ落ち着かないという観点で、微細な傾きには鈍い反応しか示さないよう修正してしまったのだろう。グッと加速させてキュッとブレーキを掛ける、そんな分かり易いゲーム挙動になってしまった。しかしこれは、行きたい方向に傾けて止まりたければ水平に戻す、「前後左右入力を傾き操作に置き換えた」だけの操作性でしかない。いや何を当たり前の事を言っているのかと思われるかもしれないけれど、此処にきちんとした違いがあったのが1作目だということ。
 前作の操作性というのは、ちょっとした傾きにダイレクトに反応してボールが転がる為、水平に保つ事も含めて純粋に「板の傾きをジャイロセンサで制御する」ゲームになっていた。その感触そのものを楽しむゲームだったと言っていい。しかし今作の水平近辺で加速が殺される作りは、アナログスティックを行きたい方向に倒して止まりたければニュートラルに戻す、その操作をわざわざWiiコントローラの大振りな傾き操作で行っているのと大差がない。これは今作でバランスボードに対応した点からも頷ける。おそらくはそんなに緻密な制御も求めていないであろう、ぶっちゃけ重心をどっちに寄せるか程度の似非体感ゲーしか想定してないように見える。いっそヌンチャクやクラシックコントローラのスティック入力に対応してしまえば、それが最もやりやすいプレイになるんじゃないかとすら思う。
 ジャイロセンサならではという部分を捨て去ってしまったゲーム、これが2なのだと。

 そしてもう一つ致命的な欠陥が、視点カメラのプログラム。
 正確には前作からの問題でもあったのだけれど、左右に90度傾けた状態から前後に傾けた際に、視点カメラが思わぬ挙動を示してしまう。本来なら当然画面(から見るステージ)が前後に傾くべきところ、どういう訳か左右に動く。まぁどう見てもバグですね、はい(苦笑)。
 プレイヤーは前後に傾けているつもりなのに画面上では左右に回っているように見えるので、あれおかしいなとカウンターを入れて泥沼にはまる。そして何より忌々しいのが、この現象に最初の5ステージ目辺りで派手に出くわしてしまうこと。前作でも違和感を感じる事はあったのだけれど、そこはステージデザインでカバーしていたらしく、壁沿いに這うように転がせたり、壁のない橋でも勢いスーッと抜ければ済む等、左右90度の状態から前後に自在に動かす操作までは求めない作りが押さえられていた(スペシャルステージには若干アレなのもあったけど)。ステージ設計者の理解の差なのか、前作がたまたまだったと思うにしてはあまりにも落差が激しすぎる。そして今作では明らかに気付くのだから開発段階でプログラムを直せと。二作目だろうと。
 前作は「ポイントを押さえた作り」が非常に好印象だっただけに、この何も考えていない(フォローもしない)醜態には完全に幻滅させられた。

 そういったことだからステージデザインにも期待すべくもなく、記憶にも残らないようなどうでもいいステージばかり。
 そもそも、今作はエディット機能搭載ということで歓迎こそしたものの、実のところ「パーツ組み合わせのステージデザインの限界」というのは言うまでもなく存在していた。前作のリンゴステージのような一体成形の3D地形はおよそ望めない。勿論それで何処まで設計自由度を出せるかという話もあるけれど、やはり前作並のゲーム性を維持する為には、エディット機能を用いたサンプルステージとは別に独自設計のステージも用意するべきだろうとは思っていた。前作の丁寧なステージデザインを思えばそれくらいの配慮もあるだろうと。しかし無情にも出てきたモノはただのエディット量産サンプルの山。
 まぁ劣化はモンキーボール2で既に通った道ですがね。あれ以上にこちらは前作を評価していただけに精神的ダメージは断然大きかった。数年経てばスタッフも変わったのかもしれないけど、後進はきちんと育てるべきだろう。フォローの気配すら皆無というのは腹立たしい。

 そして最後に、UI周り。
 Wiiといえばポインタという事になってしまうのだろう、前作と違い今作は無闇にポインタ操作に対応してしまった。しかしゲームの主軸は傾き操作なので、ポーズやステージクリアでメニューが呼ばれる度にポインタが中途半端に画面に居たり居なかったり、不必要に操作が出遅れる(横持ちすれば良いんだけど前作がプレイ出来なくなるので自分は願い下げ)。旧来の十字キー操作も残ってはいるけど逆にポインタに制御を吸われたり、どっちつかずで宜しくない。実際エディットくらいしかポインタは必要ないので、センサーバーをどかして(遮って)無反応にしてしまうのが最適。何ですかこれ。
 これは、今回になって初めて「型通りのWiiゲームっぽい設計」に落とし込んだ結果。しかしそれはアナログスティックからポインタ・傾き操作への置き換えが起こっただけの、Wii発表当初に懸念された「能のないコンバートデザイン」そのもの。そんな過ちを一作目ではなく二作目で犯すというこの体たらく。これが何よりも情けない。
 つくづく二軍三軍が作ったデッドコピーなのだと。或いはそこまで前作が偶然の産物だったのか。

 発売が数ヶ月後回しになった日本版で果たして改善されるのか。律儀な会社ならそれも有り得るけど、どうだろうね。素地が素地だから限度もあるだろうし。自分はあまりに落胆したので確認する気概は最早ありません。もし仮に直っているならやりたいけどね。