マン・オブ・スティール

 最近は何だか映画ばかり見ているかも。
 まぁ一時の勢いというのもあるのだけれど、CSの年末年始放映ラッシュからこっち、ちょこちょこと気になったものを録るようになった感じ。

 でもって前々から気になってはいた「マン・オブ・スティール」を見てみた。(流石にCSではまだやってないのでレンタルというかオンデマンドで)
 うん、良かったですよ。

 ネットの評判を見るに古典的なイメージの明朗快活ヒーロー活劇を望んでいた人には不評のようだけれど、自分は’90年代のcartoon(アニメ)のイメージが主なので、その限りでは特に違和感もなくむしろ期待通り。スーパーマン(カル・エル)のオリジンから語り出せばああいった命題が生まれるのは当然と言えるし、それこそ近年何処でもやっている「ヒーロー物の現代アレンジ」として見ても良い案配だったと思う。
 まぁリアルに語ってしまうと、それこそ人外の力が凄まじすぎて「これもう地球人じゃ敵わないよ」とばかりに半端なヴィランは持って来れなくなってしまうのが難点かもしれない。相手になりそうなのはブレイニアックとダークサイドくらいのものかと。それこそ地球外生命体の侵略の話ばかりになってしまうし、特にダークサイドは重い話になっちゃうからなぁ。
 それもあってか次回作では早々にバットマンとのコラボになるらしいけど、ジャスティスリーグに向けての布石もあるので致し方ないかなと思う。ただでさえDCコミックを牽引する商業的立場が大きいし。それこそ「バットマンで好きにやらせてやったし、グリーンランタンも不発だったんだから早くしろ」としか思われてないと思う。

 いや個人的にはダークサイドの話は凄く好きなんですけどね。自分の中ではあのニューゴッズ編の話あってこそのスーパーマンの作品イメージ。
 作中の度重なる侵略で、目の前で知人を殺され、地球はボコボコに侵略され、自分も洗脳でその片棒を担がされ、と公私共に悪逆の限りを尽くされた上に、どうにかこうにか追い詰めて解放しようとした(圧制下の)民はそれでもなお神に尽くすという、己の無力さをとことん味わわされた相手。ぶっちゃけスーパーマンの正義が完全に負けた相手。
 結果、もはや「殺るしかない」と禁断の答えに手を伸ばしたのが続編ジャスティスリーグの一篇「正義の夜明け」。他に解決の手を見出せない己の弱さに対する怒りも含めてのあのブチ切れっぷりだったんだろうな、などと思いながら見ていたものですよ。あれだけ見るとドン引きだけど、前提を知っていると見ているのも辛い。
 そもそもヒーロー物で「悪をどう止めるか」ってのは実は重い命題ではあるんだよね。バットマンなら取り敢えず捕まえてアーカムに叩き込めば解決するし、ついでに言えば適当に脱獄させて続編も書けるしで、幾らでも都合良く収まる世界だけれど、大抵のヒーロー物では逃げ帰ったり爆発やらに巻き込まれて生死不明で誤魔化すのが関の山(要は御都合主義)。そこに来てこのダークサイドという大物は「止めない限りは終わらない絶対的な悪の侵略」なので、そんな相手に「異能の力を人助けに」などと考えていただけの田舎育ちが果たしてどう向き合えば良いものか。
 そもそも言ってしまえばスーパーマンというのは、ルーサーという社会悪一人いつまでも止められないヘタレですからね。政治力が全く無いので「悪徳行為を水際で阻止する」以上にいつまで経っても踏み込めない。ましてや「手を下す」道を選んだパラレルワールドの自分に「力の支配」という過ちを見せ付けられてもいるし。ダークサイドとの対決ってのはその一歩手前で葛藤している状態だよね。
 まぁそんなものばかり書いてたらそれこそネガネガな話で客受けが悪いばかりですけどね。
 ただ、御都合主義の先にはこういう話もあるよね、という意味で好きなんだよね。別にリアルだから格好良いじゃあなくて。そういうことを考えてみてもいいじゃないと。

 ともあれ、ここで少しネタバレ込みで本編に触れておくと、
 まず一点批判すると、あの本家親父の「お前が導け」系の言動は疑問だった。訳の問題なのか、もうちょっと何とかならなかったのかと思う。精一杯解釈するならば、彼も結局はクリプトン人だったということかなぁ。そこまで盛り込んだとも思えないけど。
 後は、スーパーマンがまるで人助けもせずに街中で戦う点は、確かに気にはなった。せめて人助けに入ったところを殴り飛ばされるシーンの一つでもあればそれらしかったろうに。ただ強いて言えば今の彼はまだヒーローになる前の段階。人助けは最後の、地球人を助けるためにやむなく同族の首を折って止める(そして慟哭)、というシーンに集約されているのだと思う。これは先程の話にも繋がるところで、この苦渋の選択を持ってしてスーパーマンというヒーローの成り立ちに繋がっていくのだろう。その意味で一通りやることはやったなと、爆発エンドという安易な終わりでなく良かったと思うところ。

 そしてこの先ヒーローを束ねるJLにまで持って行くには、ルーサーとの対決で自分に足りない物をブルース(バットマン)に補って貰って、という流れになっていくんだろうな。クリプトナイトという最大の抑止力が出てないけどどうなるんだろうね。