数学は高校でドロップアウトしてしまったけど

 (グレッグ・イーガン)「ディアスポラ」読了。と言えるのかどうか。
 今までSFは何となくでしか読んでこなかった自分も最近ようやっとその楽しみ方が少しは分かってきたかな?という所で改めて触れた初の本格ハードSFかと思う。
 元々この人は難解な文章で有名な人なので今作も御多分に漏れず、初っ端からガチガチの文章が続いた時は流石に「ああやっぱまだ無理なのか」と思わされたもの。ただ幸いな事に、そこから続くソフトウェア知性体の自意識獲得のくだりや、ガンマ線バーストなる宇宙規模の災害の話などは比較的自分にも分かり易い題材だった。特にこれらは、片や人工知能の発達にも似た認識論的なアプローチ、片や別書「スタープレックス」(ロバート・J. ソウヤー)等で個人的にホットな話題でもあった宇宙論的なお話と、共に自分の興味によくよくマッチした題材だっただけに知的好奇心のくすぐられっぷりは物凄く、「やばい、ディアスポラ面白ぇよ」と脳内ボルテージが急上昇を見せたくらい。まぁ、その直後にやってきた数学論で軽く伸されてしまい、「ああやっぱり私が甘う御座いました先生」とはなりましたガ(笑)。(とはいえここは前回「ひとりっ子」での経験が活きたのか、何処を読み取って何処を把握すれば話に付いていけるのかの感覚が少し見えてきたようで、どうにか無事読み進める事は出来ました、と一応。)

 こういった過程を踏んだからこそ思ったのは、やはりこの本は「解る人間が読むと本当に無茶苦茶面白い」のだろうなということ。この本で語られている物事は、現実的なものであれ架空の物であれ、ただの荒唐無稽なアイデアというよりも何かしら実際の理論に基づいた発想が多くを占めており、つまりはそういう専門知識を持ったいわゆる学者連中こそが嗜む、正に「Science Fiction」、即ち科学界のフィクションなのだなと。そしてそれらを惜しみなく注ぎ込んだ本作はその真骨頂、或いは原点と言えるものなのかもしれない。
 ただそう書くと素人お断りのマニア本と取られがちだけれども、これは決してそういう訳ではなく(ただ相応の覚悟は必要ですガ!(笑))、それら専門的題材をベースにきちんと「物語」として収めてきている、そこが非常に巧いと感心させられるところ。それこそ諸処にちりばめられた小難しい理論を乗り越えて長い旅路をくぐり抜けた果てに「つまるところ全ては数学なのだ」と締めくくられれば、もう両手を挙げて降参するしかありませんよ先生、とかそういう感じ。いやぁ面白いなぁイーガン。これっぽっちも理解出来ているとは到底思えないのにね(笑)。

 それだけに今作はもう一度読み返したいという思いがいつも以上に強い。まぁ二度三度読み返した程度で果たしてお前に何が理解出来るのかとかそんな感じだとは思いますが。いや冗談抜きに(笑)。それでも少しでも理解に近付きたいと思わせる魅力は凄いと思う。
 ただまぁ今の自分はとにかくもっと触れるべき物が多いので、それらを通して経験値を蓄えてから再度戻ってこようかと思いまする。勿論、他の本にも言える事だけどね。

 いやぁ、やっぱSFはおもろいなぁ。
 性格柄、偏る事は危険だとは思っているので他の物にも手を着けはするんだけどハズレが多いのか何なのか、またSFに戻るとハマり度の違いに悩まされもする今日この頃。そこで某氏には「SFは面白いんだからしょうがない」と身も蓋もない事を言われたんだけど、全く反論出来ないのがいやはや何とも、困ったもんだ(笑)。
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